CH32Vマイコンプログラミング(4)|自作降圧回路と降昇圧回路切り替えプログラム~リベンジ~

はじめに

今回の内容は以前私が投稿したCH32Vマイコンプログラミング(3)|自作降圧回路と降昇圧回路切り替えプログラムの続きです。内容の把握のため以前の投稿を読んでいただくことをお勧めします。

簡単に前回を説明すると、

  1. CH32VにADCプログラムを書き込み、電池BOX(1.5V単三電池×4本)の電池残量に応じて降圧回路と昇圧回路を切り替えて、なるべく長く5Vを維持しよう。
  2. 降圧回路の自作
  3. 電池の残量を電圧の変化と考え、可変抵抗器を使って電圧を変化。一定の電圧以下になったらリレーが働き、降圧→昇圧回路への切り替えを実現。
  4. しかし昇圧回路モードで電圧が急降下する事象が発生。降圧、昇圧回路に接続した動作確認用マイコン(M5stamp C3U)の挙動が不安定に。

といった具合に昇圧モードでの安定性が悪く使用に適さない状態でした。前回は使用した昇圧回路ではM5stamp C3Uで消費する電流を賄えていないのではないか?と考え、昇圧回路に問題があると結論付けました。

今回は本当に昇圧回路に問題があるのかをM5stamp C3Uの消費電流を測定することで調査し原因の特定と改善に挑戦します。

M5stamp C3Uの消費電流の測定

今回以下のようなアナログ電流計を購入しました。

直流1.0Aまで測定できるアナログ式の電流計です。

あまり聞いたことがないメーカーで精度面で不安がありますが、電流がどれくらい流れているかはわかるかなと。。。

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ではこれを昇圧回路で駆動しているM5stamp C3Uに接続します。

使用した電池4本の合計電圧は4.7V、昇圧回路を通すと5Vまで昇圧しM5stamp C3Uまで送られています。

今回電流計を昇圧回路のOutputとM5stamp C3Uの5V入力ピンの間に接続します。

電源オフ状態の時

電源ON状態の時

あれ大して消費しないぞ?

M5stamp C3UのLEDもプログラム通り七色に発光しています。

昇圧回路からの電圧が4.99と微小に低下しているのはおそらく電流計を通したことで減圧されてしまったのだと思います。

一メモリ分しか針が動いていないため、この電流計の値を信じるなら20mAしか流れていないことになります。

前回考察した『昇圧回路が供給できる電流値200mA以上の電力をM5stamp C3Uが消費してしまうから、プログラムが正しく動かないのではないか』という考えが間違っていそうです。

リレー周りに問題あるんじゃね?

使用している昇圧回路に問題はなさそうです。

次に考えられるのが降圧と昇圧を切り替えているリレーです。切り替え直後にチャタリングが発生してM5stamp C3Uの挙動がおかしくなっているかもしれないと考えました。

そこで降圧回路、昇圧回路へのインプット電圧をリレーではなくコードをつなぎ変えることで切り替えてみます。

CH32Vのプログラムは変えませんが、リレーを動かしていた3ピンの線はつながず、電圧値のモニタだけ行います。

結果。。。

変わりませんでした。リレーの時と同じく低電圧時に挙動がおかしくなる問題はそのままです。

ただし”昇圧モードになったから”ではなかったことがわかりました。

降圧モードにしろ、昇圧にしろ可変抵抗器による電圧変化は非常にシビアであることがわかりました。最初降圧回路または昇圧回路へのインプット電圧は6Vから始まり可変抵抗器を回すと徐々に低下するのですが、4.9V以下になったとき急に3Vから2Vまで急低下しました。

この回路図ではGNDが降圧、昇圧回路ともにつながっているためそれが原因かと考えましたが、GNDもインプット電圧と一緒につなぎ変えても低電圧時に不安定になりました。

可変抵抗器の問題がある?

可変抵抗器を外し、電圧の変化は新旧電池の交換で変えるものとしました。

新品電池x4=6V以上

旧電池x4=4.5V以下

この二つを変えることで降圧モードと昇圧モードの切り替えをさせることが可能です。

結果。。。

Input電圧6V以上(降圧モード)の時

Input電圧4.5V以下(昇圧モード)のとき

写真のテスタはInput電圧を測定しています。

6V以上では降圧モード、4.5V以下では昇圧モードに切り替わることが確認で、またM5stamp C3UのLED挙動もプログラム通り七色に輝くことができました。

また降圧、昇圧モードの変わり目付近でリレーのチャタリングが発生する懸念についても問題ないことがわかりました。電池をちょうどいい感じに組み合わせることでモードが切り替わる5V付近のInput電圧を再現できることができました。このとき1[s]感覚くらいで降圧と昇圧モードを行ったり来たりする挙動をしており、どちらのモードでもM5stamp C3Uのプログラムは動いていました。

もともとCH32Vのプログラムでは電池の電圧が5V以下になったときにリレーに出力して昇圧モードに切り替わるようにしていましたが、5Vの変わり目付近でリレーの挙動が不安定になる可能性を考慮し、昇圧モードでは1[s]保持するプログラムとしていました。この対策がきちんと機能していました。

※ただし切り替わり瞬間は降圧、昇圧回路ともに断線された状態となるので、目では負えないくらいの一瞬間だけM5stamp C3Uは電源オフの状態になっていると考えられます。

最後に

電圧調整のために使用していた可変抵抗器が原因であり、配線もプログラムも当初の狙い通りの結果が得られました。

本来ならどこのご家庭にもある(?)直流安定化電源などで安定した電圧変更を行うべきだったのですが、私は持っていないため電池と可変抵抗器で電圧の変更を行うことにしましたが、可変抵抗器での電圧変更は私が思う以上にシビアでした。

今回何とか形にはなったので、この降昇圧回路切り替え回路の評価について言及します。

結局、”珍回路”だった!?

労力と時間と費用をかけた一連のプロジェクトでしたが、これ以上のブラッシュアップはやめにします。なぜならやってるうちにこの回路が実用的ではないことが分かったからです。

理由は

  • 降圧モードの効率が悪い。
    • 正直企画倒れな気がしますが、降圧回路で用いたリニアレギュレーターは仕様上、電圧降下の分を”熱”に変換します。発熱分は無駄になってしまうわけです。対して昇圧回路で使用しているスイッチングレギュレーターはONとOFFを繰り返すことで出力電圧を調整するので効率面ではこちらの方が勝っています。つまり5V以上の時は効率の悪い降圧回路を使い、5V未満になってから効率のいい昇圧回路に切り替わるという何とも残念な仕様になってしまいました。
  • リニアレギュレーターの利点を全消しにする昇圧回路
    • リニアレギュレーターは効率が悪いと言いましたが、利点もあります。電圧を熱に変換して調整するため出力電圧は安定しています。対してスイッチングレギュレーターはONとOFFの繰り返しで出力電圧を調整するため細かいパルス状に変動し、またノイズのリスクも高いです(リニアレギュレーターと比較して)。リニアレギュレーターは安定した電圧と低ノイズが必要とされる機器には最適です。ですが私が作った降昇圧切り替え回路は、降圧モードで低ノイズで安定した電圧を供給していたのに、昇圧モードでは(降圧モードと比べて)ノイズもあれば電圧も不安定になる回路になってしまいます。電池が消耗すると昇圧モードになってしまうことを考えると、リニアレギュレーターの利点を必要とする機器には使用できません。
  • リニアレギュレーターとスイッチングレギュレーターを合わせた結果、どちらにも使えない回路。
    • 降圧モードで実現できる安定電圧、低ノイズが必要とされる機器では昇圧モードになったときに使えなくなる。昇圧モードで発揮できる高効率な電圧は降圧モードでは実現できない。と”低ノイズ+安定電源”、”高効率”どちらの用途にも使えなくなってしまいました。
    • どちらが劣っているわけではなく、それぞれで求められる用途が異なるということ。
    • 以上のことからリニアレギュレーター、スイッチングレギュレーターそれぞれの短所が悪魔合体したことでどちらの長所も打ち消し合うという残念な回路となりましたとさ。
  • 降圧と昇圧を”切り替える”という本来の狙いすらも怪しい。
    • スイッチングレギュレーターを使った回路には昇圧だけでなく、降圧、昇圧どちらもできる回路もあります。よって降圧と昇圧を切り替え、長く5Vを出力したいのであればそれを使えばいいわけです。進めている最中にそういう回路が存在することを知りました。

とまあ、いろいろ言い訳を書きましたが、結論としては企画倒れだったわけです。実は最初に降圧回路としてリニアレギュレーターを選んだ時点で、スイッチングレギュレーターを用いた降圧回路があることは知っており、降圧も昇圧もできるスイッチングレギュレーターの回路の存在は予想していました。

でも降圧と昇圧の切り替え回路をやってみたい。同じスイッチングレギュレーターを切り替えるだけだと面白みに欠ける。なら降圧回路はリニアレギュレーターで!と自分のやってみたい欲が止められませんでした。

結局このプロジェクトは無駄になってしまいましたが、今回自作したリニアレギュレーターは他でも使用できますし、何より楽しかったのでヨシ!!

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